【体験談】少年時代を田舎で暮らしてみて…

私は、高校卒業まで田舎で暮らしていました。その後福岡市で暮らしつつ、全国を旅しながら学生時代を送りました。今回は一応日本五大都市である福岡市での暮らしや、都内、大阪市での仕事での滞在、日本全国の旅の経験をした私が、改めて田舎での成長を振り返った内容です。
私が育った町
私が育った町は、佐賀県相知町という、人口8千人ほどの町です。その中にいくつか地域がありますが、中心部からは離れた場所です。小学校は全校生徒60人、コンビニまでは4km、山のふもとに点在する集落。人によってはそんなの田舎ではないと思われる方もいると思いますが、9割以上の方は田舎だと思うような場所だと思います。

田舎の子どもは外で遊ぶ?
田舎の子どもとなると、外で元気に遊んでそうなイメージですが、決してそんなことはありません。むしろ、外での娯楽が少ない分、ゲームやインターネットの時間は多いと思います。実際、小学生の頃はスマホもない2000年代後半で、世間ではインターネットはまだ一部の人の娯楽でしたが、学校でニコニコ動画が流行ったくらいですから。
休日友人の家に行ったときも、2時間ゲーム→1時間空き地で野球→2時間ゲーム みたいな感じでした。
それでも、田舎でしかできないような遊びも多かったことは事実です。川に飛び込んで遊ぶ、近くの山での壮大な鬼ごっこ、スキー、雪合戦等々、都市部で育っていたらできなかった遊びは多かったです。
人間関係は面倒くさいのか
地域の行事は半強制
よく田舎ではご近所付き合いが大変だと言われますが、そのとおりです。神社の掃除やゴミ拾いはほぼ強制参加です。大人となった今では、仕事が休みの日にまで働くのは勘弁です。しかし、子どもの頃は、歳の離れた人と接するいい機会だったのかなと思います。
変わった人は多い(いい意味で)
娯楽が提供されている施設が無い影響なのか、大人の人は、一人趣味を持った人が多かったです。私の祖父はギター、近所の人は機械いじり、友人のお父さんはプログラミング、お母さんはベーシストのように、一人趣味を楽しむ人が多く、そのせいか変わった人(いい意味で)は多かったです。
現在の私が楽器が弾けて、機械も弄れて、プログラミングもできるような人間になったのは、この環境のお陰だったと思います。

友達は選べない
全校生徒は60人、1学年10人ほどなので、友達は選べません。幸い私の学校では、いじめが起きたらクラスが崩壊する考えがあったので、いじめは少なかったと思います。ただ、私自身が変わり者だったので、どこか周囲に馴染めていない気持ちはありました。それでも、10人しかいないので、その10人に合わせるしかないのです。
よそ者排除はほぼ無い
よくネットでも言われているよそ者排除は、今となっては無いです。確かに2000年代前半頃までは、よそ者排除の文化はあったように思います。ただ、それは当時の高齢の世代で終わって、今の80代の世代では無くなっているように感じています。最近、フリーランスの方が移住してきているようですが、地域の人として受け入れられているそうです。
よそ者排除に関しては地域差もあるとは思います。私の地域では現在の70~80代の世代は炭鉱による移住者が多い時期だったので、その辺りも関係しているとは思います。
子どもの教育は良くないのか
大前提として、教育にもいろいろあります。よく、地方では都市部に比べて教育の格差があると言われています。この場合の教育は、学問としての教育を指すものです。しかし、それ以外にも教育はあります。人間性、趣味、体力づくり等々。ここでは、それら全てを含めての教育とします。
個性は育つ
生活の中に情報が少ない分、個性は育まれます。都市部でも、子ども博士のような人はクラスに1人はいると思います。また、一つの分野を極めた人が1~2人くらいいたりしますよね。私が通っていた小学校の場合、ほぼ全員が子ども博士、あるいはある分野を極めた人でした。理科の授業では先生以上に詳しい人、パソコンの授業でコマンド叩き始める人(私)、クラスの出し物で弾き語りをする人など、クラス全員が変わった奴でした。
地域で子どもを育てる文化
子どもが少ないこともあって、大人はみんな子どもが好きです。近所の子どもを集めて大きめの車で遠出したり、イベントを開催したりしてくれました。一緒に遊んでくれることもありました。私の場合、バイクのエンジンが気になって、一緒に分解してくれた人もいました。また、親がどうしても外せない用事ができたときは、ご近所さんに預けられることもありました。地域みんなで子どもを育てる文化は根強く残っていて、それは良いところだと思っています。

動物にやさしくなる
家を出れば、動物が多くいるので、動物には優しくなると思います。仲の良い猿ができたり、いつも家にくるカメとかができるので、自然と動物への愛着はできます。
学問は都市部に劣る
学問では都市部に劣るのは確かです。まず、近くに高校も大学も無いので、小学生の時点で、高校以降の人生を意識することがありません。また、親世代で大学に進学している人がいないので、そもそも子どもの進路に大学が無い家庭も多い傾向だと思います。
親世代としては、地元の工業高校、商業高校を卒業して、地元で働くことが最高の人生という考え(その考えも間違ってはない)なので、それ以上にもそれ以下にもならない人生になる人は多いです。
それでも、親がその気になれば、それなりの進学先はあります。佐賀県の場合、偏差値70の佐賀県立佐賀西高校、早稲田佐賀高校があるので、東大を目指せるレベルの高校はいくつか存在します。
勉強時間は少なくなる
電車・バス通学の場合、ほとんどが1~3時間に1本のダイヤになっています。17時に学校が終わっても、帰宅時間は19時、部活動をやっていたら21時以降になります。待ち時間で勉強すれば良いとよく言われますが、机に向かって勉強するとでは、質が違います。高校時代は無駄な時間が多かったなと思います。

体験の機会が少ない
都市部では、展覧会が開催されたり、大きな図書館があったり、店頭での体験ブースがあったりと、体験ができる場所が多くあります。田舎では、展覧会は皆無、図書館は遠くて校則で行けない範囲、店は駄菓子屋一つなので、体験への機会は本当に少ないです。そのため、どうしても偏った思考になってしまう傾向にあります。家に色々な本を置いたり、休日に博物館や展覧会に行ったり、ネットを使わせるなどと、家庭での工夫が必要です。
子どもの苦労
田舎ほど大人が自由に見える世界はありません。子どもができることには社会的な制限があります。都市部では公共のものでカバーできるものも、田舎ではできないことがあります。
移動手段が無い
都内では電車、福岡では西鉄バスがあれば移動には困りません。しかし、田舎では数キロ先の駅から、2時間に1本の電車が出ているだけです。
休日に高校の友達と服を買いに行くとします。東京都八王子市の場合、近くのバス停まで行き、都営バスで八王子駅まで行けば良いですし、そこまでしなくても近くにショッピングモールがあったりしますよね(恩方には無いとかはさておき)。それが田舎の場合、4キロ先の最寄り駅まで自転車を漕ぎ、1時間近くかけて電車で佐賀駅まで行き、バスに乗り換えてイオンモール大和まで行く。ここまでしないといけません。移動時間>ショッピング になりがちです。
親しい友人や恋人と休日に出かけることは、中学生頃から憧れるものです。でも、大人とは違い、車は運転できない。田舎育ちの方は、一度はこの窮屈さを感じたことがあるのではないでしょうか。

好きなものを自由に買えない
人間である以上、欲しいものはあるものです。ただ、それを自由に買う権利を得るのが大変です。欲しいものを親の手を借りずに手に入れるには、「移動手段が無い」の項を実行する必要があります。マンガ1冊欲しいからと1日掛けて買いに行くのは大変です。そこで親の手を借りる必要があります。内容は1.車で連れて行ってもらう 2.ネットで買う の2択です。
車で連れて行ってもらう場合も、ネットで買う場合も、1度親を通すことになります。ゲームが欲しいと思っても、「ゲオに行きたい」というと「ゲームはダメ」と言われ、楽天で買うときもクレカ登録の段階でバレます。親の審査が入るのは、許可が通りやすかったとしても、ストレスにはなります。
田舎で子育てしたいか
田舎で育った私に子どもができた場合、田舎で子育てしたいかですが、私には合わないかなと思います。
1つ目に、何処か行きたいと言われたら車で連れて行かないといけませんし、最寄り駅が遠いので、車で送迎する場合もあります。子育てのハードルが高くなります。
2つ目に、友人と出かけようにもハードルが高いので、子どもがかわいそうです。車も原付きも乗れないのではあまりにも世界が狭すぎます。どこかで耐えられないほどの苦痛が出ると思います。
小学生までは子どもにとっても良い環境だとは思いますが、年齢が上がるにつれてどうしても不便を感じるようになります。
理想は田舎が近い都会
とはいえ田舎の良さも私は知っています。理想は田舎が近い都会です。静岡県浜松市、北海道札幌市、福岡市辺りが最適解かなと思っています。

都会の恩恵を知れたのも田舎で育ったから
都会の便利さ、情報量の多さ、刺激の強さを知ることができたことは、田舎で育ったからだと思っています。もし私が渋谷区のど真ん中で育っていたら、それらの恩恵は当たり前だと思って生活していたと思います。この恩恵を享受するよう意識できているのは田舎で育ったからです。便利な公共サービスや情報を受けられる幸福を感じながら、しばらくは都市部で生活していこうと思います。